持続可能な舶用燃料を利用した商船を建造する場合、目的に合った正しいソリューションを確実に選ぶことが造船所にとって重要な鍵になります。 しかし、代替燃料の導入は新たな安全上の課題をもたらし、船級協会の規則にも対応する必要が出てきます。 Roxtec は、電線・パイプ貫通部シール、検査サービス、ソフトウェアを通じて造船所を全面的にサポートしています。
今、国際海事機関 (IMO)、安全機関、造船所の顧客は、温室効果ガス排出量の大幅な削減を要求しています。 今後グリーンエネルギーへの移行を可能にするために、造船所は新たな貨物船やタンカーの建造・修繕の技術と知識が必要になります。 柔軟性に優れた電線・パイプ貫通部シールは、クリーンな舶用燃料導入の準備を助けます。
持続可能な舶用燃料がもたらす安全上の課題
造船業界では今後、エンジンの改造、デュアル燃料エンジンや燃料柔軟性を備えたエンジンの導入、様々な再生可能バイオ燃料の利用が進むでしょう。 一隻で一種類以上の燃料を利用することになります。 液化天然ガス (LNG)、液化バイオガス (LBG)、アンモニア、水素、メタノール、エタノール、メタン、水素化処理植物油 (HVO)、燃料電池、または風力、太陽光、原子力などの組み合わせです。 従来の石油燃料の代替となる低炭素・排出量ゼロの舶用燃料の中には、バンカリング作業、船上燃料貯蔵、燃料分配、メンテナンス作業において新たな安全上の課題があります。 様々な燃料を取り扱い、ガス漏れや貨物火災のリスクを回避するためには、防火壁と安全隔壁で隔離された部屋と区画が必要になります。 そこで隔壁の健全性を保つため、安全かつ高信頼性の、しかも柔軟対応に適した電線・パイプ貫通部を模索することが重要になります。
複数の危険からの保護を認証された電線・パイプ貫通部
Roxtec 電線・パイプ貫通部は、何十年にもわたって大手造船所で使用されてきました。 Roxtec シールは、過酷な環境に耐え得る材料を使った強固な製品です。また、火、ガス、水、爆発をはじめとする複数の危険から船舶を守るために開発され、その性能が認証されています。 国際基準が求める厳格な耐火性能を持つシールは、電線やパイプの貫通部を通じて隣の区画へと火が拡散するのを防ぎます。 ガス密性にも優れているため燃料システムの健全性を維持でき、危険な事故を防ぎ安全な運航を確保できます。 また高い水密性も備えているので、運航に不可欠な重要設備を浸水や湿気から守り、運航に支障をきたす故障も防ぎます。
グリーン燃料に関する船級の推奨事項と指針
代替燃料の中には、従来型の燃料よりも複雑な封じ込め設備を必要とするタイプがあり、 それぞれの代替燃料に固有の危険があります。 下に、DNV、BV、ABS、Class NK、CCS をはじめとする船級協会の公開文書にある規制や推奨事項の例をいくつかご紹介します。
- アンモニアは、腐食性、毒性、引火性、爆発性の物質です。 船員と水生生物を守るためには、毒性、火災、爆発のリスクを考慮した安全対策が必要になります。 燃料貯蔵、燃料調整室、エネルギー変換装置には、安全性を保証できる設計が求められます。 危険区画と安全区画は、アンモニアの発火特性に合わせなければなりません。
- メタノールは、燃焼範囲が広い物質です。 メタノールは、人体への吸入、暴露、皮膚付着を回避しなければなりません。 閉鎖空間や甲板での漏洩は許されません。 発火時の火炎は、付近の物質に延焼するまではほぼ視認できません。 腐食性があるため、配管設備などには特に注意が必要です。
- 水素は爆発性があり、燃焼範囲が広く空気中で拡散しやすい物質です。 水素漏れにより可燃性ガス混合物が急速に形成され、重大な火災を引き起こす可能性があります。 火炎は目に見えず、発見しづらい特徴があります。 他の引火性化合物と比べ、速いスピードで燃焼するのが水素です。 取り扱いおよび保管時の安全性は極めて重要になります。
- アンモニアと天然ガスは、従来型の燃料タンクでは対応できない沸点を持つ物質です。 このためどちらの燃料を使う場合でも、圧力上昇とボイルオフガスを管理できる貯蔵供給システムが必要になります。 造船資材を選定する際に重要なポイントです。 密閉された空間で漏れたガスに引火すると爆発や火災を引き起こす可能性があるため、天然ガスは漏洩してはなりません。
Roxtec は密閉シールと保護に関する専門知識で造船所をサポート
造船所にとって Roxtec は、モジュール式シーリングシステムのサプライヤーであると同時に、信頼される技術アドバイザーでもあります。 また Roxtec は、水素、蓄電池、エネルギー貯蔵、風力発電、太陽光発電、原子力発電の業界でもシーリングを担うパートナーです。いずれの業界でも安全要求は高く、運用信頼性が求められます。 造船所の設計担当者と施工担当者が対処することになる新たな課題に関して、Roxtec はすでに必要な経験と知識を持っています。 Roxtec はカーボン排出を削減すると同時に、環境災害を防ぎ人命と資産の損失を回避したいお客様をサポートいたします。
防火、ガス密、水密の必要性
リスクを軽減するには、二重防護、区画分離、隔離設計をはじめとする追加の安全策が必要です。 燃料調整室や二重管配管などの周りには、二重防護として機能するような、気密性と水密性を持つ空間を設ける必要があります。
- 燃料調整室は、ガス密かつ水密空間でなければなりません。燃料供給ステーションは、気密境界で囲う必要があります。 燃料調整室の境界は、A-60 の防火壁で区画遮蔽されなければなりません。 燃料供給ステーションは、機械室と火災リスクの高い空間に対して A-60 の防火区画で分離する必要があります。
- 計画と造船の段階からすでに、燃料の燃焼性と引火エネルギーを考慮したリスク管理が重要です。 どの燃料についても、安全な取扱いを実現し適切な基準や安全確保の仕組みを確立するには、船内手順書や取扱説明書を更新し、教育プログラムを見直す必要があります。
Roxtec が持つ危険に対する豊富な知識と経験
Roxtec では、海上での安全維持のために各目的に即したソリューションの開発と試験の依頼を、多くのお客様から受けます。 Roxtec には、海事業界のお客様の新しい要求を満たすシール製品の開発や試験の実績が豊富にあります。例えば、溶接が不要なソリューションや、(SOLAS の規制に従い) 火災発生後でも密閉性を維持できる貫通部シールなどです。 Roxtec の技術サポートは、造船所の方にも安心してご利用いただけるものです。また、ケーブル・パイプ貫通部の品質検査は、船級協会からもサプライヤーとして認定されているサービスです。 Roxtec が目指すのは、安全かつ将来を見据えて修繕しやすい船を船主側に引き渡せるよう、造船所をサポートすることです。
船級規則遵守の重要性
2021年以降、船級規則では、水密性電線貫通部の体系的な管理、文書化、検査を求めています。 安全障壁を設計する際は、電線・パイプ貫通部が脆弱ポイントにならないよう注意が必要です。 閉鎖区画や安全ゾーンの機能を長期にわたって維持するためには、認証を受けている電線・パイプ貫通部を選定し、仕様に明記し、正しく使用することが不可欠です。
船級協会認定の検査サービスと貫通部管理ソフトウェア
Roxtec は貫通部施工の品質検査を提供するサービスサプライヤーとして、船級協会より認定を受けています。 それ以外にも Roxtec は貫通部管理ソフトウェア を開発していて、造船から運航管理のフェーズに至るまで造船所と船主の皆さまが協力体制を築きやすいよう支援しています。 デジタルツールを活用することで、貫通部の品質管理、作業時間の短縮、船級規則の準拠に必須となる電線貫通部シールシステム登録簿の作成と管理が容易に行えるようになります。
安全規則や要件を満たしながら燃料技術の転換に関わる修繕や更新工事を行うには、Roxtec の貫通部シール、検査サービス、ソフトウェアの活用が役立ちます。