この業界では、耐火や水密区画を通過する金属配管をシール保護するのに、従来工法であるバルクヘッドユニオンやカップリング継手が見直され、別の工法が採用され始めています。 その理由を解説します。
1. 貫通部あたりの重量増加
未承認で伝統的に標準となっているバルクヘッド継手でも、型式認証を得て海洋・オフショア構造物での使用が試験されているバルクヘッドユニオンでも、どちらを使っても重量が重くなります。
広く使われている従来型のバルクヘッドユニオンは、多くの場合900mm長の鋼管で、両側のカップリングを介して配管システムに使われる薄肉の金属パイプと接続されます。 配管の重量に加えて、バルクヘッドユニオンの取付けでさらに重量が増加します。
- 900mm長の厚肉鋼管
- カップリング継手 x 2個 (片側に1つずつ)
認証されているバルクヘッドユニオンは短く厚くなりますが、それでも重いです。 何千もの取付け箇所の重さを加算してみると、重量に与えるインパクトはかなり大きくなります。
バルクヘッドユニオンの施工時間については、金属配管シールの施工比較動画をご視聴いただくか、比較分析資料をご一読ください。
2. 時間のかかる施工プロセス
バルクヘッドユニオンは両側を処理する必要があるため、片側の処理だけでも長い施工時間がさらに2倍になってしまいます。 また、貫通部の両側にアクセスして施工するのが難しい場所もあります。
すべての貫通部の両側で、いくつもの施工ステップを踏む必要があります。
- 予め準備しておいたユニオン接続継手付きの900mm長鋼管 (または認証済みの短いバルクヘッドユニオン) を溶接。
— 多くの造船所では、費用効果が高いと信じてスクラップ材から接続継手 (バルクヘッドユニオン) を製作しています。が、思っているより工数は長く必要になります。
— 所定位置に保ちながら900mm長の大きな鋼管を溶接するには、2人がかりの作業となりさらに費用がかさみます。 - パイプを切断。 粗い端部のバリを取り除き研磨。
- 切断パイプの外側をきれいに掃除。
- ユニオンナットとカッティングリングを切断パイプに取付け。
- ユニオンナットを締め付けてシール処理。
- 構造の反対側に移動し、同作業を繰り返す。
製作から切断、掃除、溶接の作業の繰り返し、区画の片側から向こう側への移動まですべての工程を含めると、施工に費やす総作業時間は増え、コストの問題にも関わります。
3. 継手箇所の増加と完全性への悪影響
配管材料の選定は、配管システムの長期的なパフォーマンスの基礎となる重要な決定です。 せっかく選定した配管を貫通部毎に切断してバルクヘッドユニオンと接続することは、システムの完全性、品質、および性能のレベルを低下させることを意味します。
スクラップ材で作った品質の劣る鋼管や短い炭素鋼のパイプへと接続すれば、なぜその配管材料を選定したのかという本来の肯定的な理由が無意味なものになってしまいます。 継手部品は応力点となり、また配管システム全体に散在する腐食リスクの要注意箇所となります。
すべての接続部または継手部は配管システムにとって潜在的な弱点となります。配管システム内に余計な凸凹ができることで、細菌が付着したり腐食が生じやすくなるからです。 継手部は滴下や漏れのリスク箇所であり、配管内における異物の詰まりや腐食ゾーンが発生する原因にもなります。そして更に、メンテナンスや修理コストの増加につながるのです。